歯の被せ物や差し歯の治療において、「白くてきれいな歯にしたい」と願う患者さんは少なくありません。そんな要望に応える方法のひとつが、「ジルコニアフレーム+陶材築盛(とうざいちくせい)」という高度な補綴技法です。
ただ、この言葉だけを聞いても、歯科の専門知識がない方にとっては「一体どういうもの?」「セラミックとは違うの?」と感じるのではないでしょうか。
本コラムでは、「ジルコニアフレーム+陶材築盛」とはどのような治療なのか、なぜこの方法が優れているのか、そしてその仕上がりに職人技が必要とされる理由などを、専門用語をかみ砕きながら解説していきます。
ジルコニアフレーム+陶材築盛とは?
まずはこの言葉を分解して考えてみましょう。
• ジルコニアフレーム:
「フレーム」とは土台のことです。ジルコニア(酸化ジルコニウム)という非常に硬く丈夫な素材でできた芯の部分が、被せ物の骨組みになります。これは金属の代わりに使用される白いフレームで、メタルフリー治療の代表的な素材です。
• 陶材築盛:
「陶材」とは、セラミックの一種である歯科用ポーセレンのこと。「築盛(ちくせい)」とは、陶材を一層一層手作業で盛り重ねていく作業を意味します。歯科技工士が筆や専用の器具を使って、自然な歯の色や質感を再現するために焼き付けを何度も行いながら丁寧に仕上げていきます。
つまり、「ジルコニアフレーム+陶材築盛」とは、ジルコニアの丈夫な土台の上に、熟練した技工士が手作業でセラミックを盛り付け、天然歯そっくりの見た目を作り上げる治療法です。
なぜ「フルジルコニア」ではなく築盛が必要なのか?
ジルコニアだけで作られた「フルジルコニアクラウン」も近年普及しています。フルジルコニアは強度が高く、臼歯(奥歯)などには特に適しており、破損の心配が少ない素材です。
しかし、審美性の面では課題もあります。フルジルコニアは非常に硬い一方で、光の透過性(透明感)がやや劣っており、天然歯のような自然な色味や奥行き感を出すには限界があります。
そこで、見た目の美しさが求められる前歯や口元の目立つ部位には、「陶材築盛」が必要になります。築盛によって、以下のような繊細な表現が可能になります。
• エナメル質のような透明感
• 歯の表面に見られる縦の模様や細かな凹凸
• グラデーションのある色の変化(歯の根元から先端にかけての明暗)
• 年齢や性別、顔貌に合った自然な歯の形状や質感
これらは、機械で一律に削り出すだけでは再現できません。まさに“手仕事”でしか表現できない美の世界なのです。
ジルコニアフレーム+陶材築盛のメリット
1. 審美性に優れる
自然な透明感、色合い、光の反射など、天然歯に近い外観を再現できます。とくに前歯に使用した場合、他の歯と並んでも違和感がなく、まるで本物の歯のような仕上がりになります。
2. 高い強度と耐久性
ジルコニアフレームは金属に匹敵するほどの強度を持ち、強い咬合力にも耐えることができます。ブリッジなど広い範囲の補綴にも対応可能で、セラミックが欠けにくくなるような設計も可能です。
3. 金属アレルギーのリスクなし
メタルフリーであるため、金属アレルギーがある方にも安心です。歯ぐきの変色(ブラックライン)も起こりにくく、長期的な審美性を保ちます。
4. 精密な適合性
CAD/CAM技術を活用してジルコニアフレームを高精度で削り出し、その上に築盛するため、歯にぴったりと合う被せ物が完成します。フィット感が良いため、汚れが溜まりにくく、虫歯や歯周病の予防にもつながります。
なぜ熟練した技工士が必要なのか?
陶材築盛は、非常に繊細で高度な技術を要する工程です。色の選定、焼成温度、陶材の厚み、咬合面の形状や質感の表現まで、すべて職人の感覚と経験がものを言います。
色味に関しては、隣の歯と完全に調和させるために、**「シェードテイキング(色合わせ)」の段階で直接患者さんの口元を見ながら色を調整することもあります。**このプロセスは、写真やデータだけでは補いきれない「目視による微調整」が必要です。
また、咬み合わせの調整も見逃せません。ジルコニアは非常に硬いため、調整を誤ると対合歯(噛み合う歯)を摩耗させてしまうリスクがあります。そのため、咬合の知識と経験に基づいた**“削らない微調整”や“当たらせ方”**も重要になってきます。
ジルコニアフレーム+陶材築盛は、まさにデジタルとアナログの融合。
機械では作れない繊細さを、人の手で仕上げる――この技術の真価を引き出すには、熟練した歯科技工士の存在が不可欠です。
まとめ:美しさにこだわるなら、築盛という選択を
「ジルコニアフレーム+陶材築盛」は、強さと美しさのバランスを追求した、歯科補綴の中でも高度な技術のひとつです。とくに前歯や口元の見た目を大切にしたい方、自然な笑顔を取り戻したい方には、非常におすすめできる治療法です。
ただし、どのような仕上がりを目指すかによって設計や素材の使い方が異なるため、治療を受ける際には、歯科医師と技工士がしっかりと連携している医院を選ぶことが大切です。
「ただ白いだけでなく、自然で美しく、長く使える歯を手に入れたい」――
そんな方は、ぜひジルコニアフレーム+陶材築盛による治療をご検討ください。それは“歯の修復”ではなく、“口元の再創造”と言える治療です。
ブランパ梅田のメニューでは、ジルコニア+レイヤリングと専門用語で示している治療法です。
お気軽にご相談くださいませ。歯科医師山内